これ、ホントです。
給与担当者からすると、皆さんにどう説明すれば納得してもらえるのか悩むくらいに年末調整の内容が大きく変わりました。
今回は、令和2年の年末調整で何がどのように変わったのかを分かりやすく解説していこうと思います。「今まで年末調整の内容をちゃんと知らなかった!」という人は特に読んでおくことをオススメします。今年の変更内容を理解しておけば、来年以降の年末調整に必ず役に立ちますよ。
年末調整をはじめとする税金にかかわる手続きは、知っていれば得!知らなければ損!する話が結構あります。「損」をしないためにも、制度の内容を正しく理解しておきましょう!
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- 令和2年の年末調整の変更点を知りたい人
目次
令和2年の年末調整の変更点は次の5つ!
- 基礎控除の引き上げ
- 給与所得控除の引き下げ
- 所得金額調整控除の創設
- 寡婦控除の改正
- 上記変更に伴う申請書の変更
これを見て「あ~そうなのか!」と理解できる人はまずいないでしょう。
安心してください。これから1つ1つ丁寧に説明をしていきます。
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1.基礎控除の引き上げ
「基礎控除」というのは、所得控除の1つで、家族構成や職業にかかわりなく誰でも一律に受けられる控除です。
この「基礎控除」の額が、次の表のように変わりました。
出所:国税庁HP
これによって何が変わったのか?ポイントは次の3つです。
- これまで一律で38万円だった基礎控除額が48万円に引き上げられた!
- 合計所得が2,400万円を超えると、基礎控除額は段階的に減ることになった!
- 合計所得が2,500万円を超えると、基礎控除が適用されないことになった!
これまでは、所得の多い少ないにかかわらず、誰もが一律で38万円の控除を受けることができていましたが、令和2年からは所得に応じて基礎控除の額が変わります。
「基礎控除」の根本的な考え方は、「最低限の生活を営むために必要な金額(昨年までは38万円、令和2年からは48万円)には税金をかけないようにして生活を保障しましょう」というものです。なので、高所得者の方に基礎控除が適用されないのは、当然と言えば当然かもしれませんね…
2.給与所得控除の引き下げ
基礎控除が10万円引き上げられた一方、「給与所得控除」は一律10万円引き下げられました。
出所:国税庁HP
基礎控除の引き上げだけであれば、控除される金額がUPするので税金が安くなりますが、、、それで終わらないのが国の政策です。基礎控除が引き上げられた分、「給与所得控除」も同額の引き下げを行うことで、大多数の人は控除額がプラスマイナスゼロに。よって、結果的に納めるべき税金の額は変わらないこととなります。
じゃあなんで控除額を変えたの??と疑問に思いますよね。実は、今回の改正で年収が850万円以上ある高所得者の方々は、結果的に増税となる仕組みになっているのです!よく考えられていますね。
ただし、年収850万円以上の方でも、子供がいたり介護すべき人がいたりと、人によっては増税になると苦しい人もいます。そのような方々に対して、税金の額が上がらないように新設されたのが、3つめの「所得金額調整控除の新設」なのです。
- 給与所得控除は10万円引き下げられた!
- 給与等の収入金額が850万円以上の人は増税対象に!
3.所得金額調整控除の創設
先に説明した通り、給与所得控除が引き上げられたことで、結果的に年収850万円以上の人は増税対象となりました。しかし、高所得者の中にも子供がいて生活費がかかったり、障害を持っていることでお金がかかったりする方がいます。そのような方々には、税負担を軽減させましょう!ということで創設されたのが「所得金額調整控除」です。
具体的には、給与等の収入金額が850万円を超える人で、下の要件に該当する場合は、給与等の収入金額(収入金額が1,000万円を超える場合には、上限1,000万円)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得の金額から控除することができます。
- 本人が特別障害者
- 同一生計配偶者が特別障害者
- 扶養親族が特別障害者
- 23歳未満の扶養親族がいる
23歳未満の親族については、税法上の扶養でなくても対象となります!
つまり、給与収入850万円以上で23歳未満の親族がいる方であれば、実際に会社へ扶養親族として届出をしていなくても適用となります。さらに、夫も妻もどちら給与収入が850万円以上であれば、夫婦双方で申請することができます!
税法上の扶養や社会保険の扶養に入っていない限り、会社側はあなたの家庭事情を知りませんので、自分で申告をしてくださいね。
ここで、所得金額調整控除のポイントを整理しておきましょう。
- 給与収入850万円以上で要件に該当すれば軽減対象!
- 夫婦双方で申請が可能!
4.寡婦控除の改正
また難しい言葉が出てきましたね…。
「寡婦」というのは、夫と死別又は離別し、再婚していない女性、夫のない独身の女性のことを指します。ひとり親であることから、控除の対象となっていて、これまでは要件の内容により「寡婦控除」「特別の寡婦控除」「寡夫控除」に分かれていました。
令和2年からは、これまでの「特別の寡婦控除」と「寡夫控除」が廃止となり、従来の「寡婦控除」の要件が見直されたとともに、新たに「ひとり親控除」が創設されました。
「寡婦控除」と「ひとり親控除」の要件は次の通りです。
① 夫と離婚した後婚姻をしていない人で、次のいずれにも該当する人
- 扶養親族があること
- 合計所得金額が500万円以下であること
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
② 夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死の明らかでない人で、次のいずれにも該当する人
- 合計所得金額が500万円以下であること
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
現に婚姻していない人、または配偶者の生死が明らかでない人で、次のいずれにも該当する人
- 合計所得金額が48万円以下の生計を一にする子がいること
- 本人の合計所得金額が500万円以下であること
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
「ひとり親控除」が新設させたことで、これまで「寡婦控除」の対象外だったシングルマザー・シングルファーザーも控除の対象となりました!これは大きな変更点ですね。
これまでシングルマザー・シングルファーザーが控除対象外だったことがもはや驚きですが。
- 「未婚のひとり親」も控除対象になった!
- 男性と女性で控除額が統一された!
5.申請書の変更
1~4の変更が行われたことにより、申請書も大きく変わりました!
年末調整に関係する書類は全部で9種類あるのですが、会社員の方が年末調整の時期に提出すべき書類は次の3枚です。
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
「保険料控除申告書」と「住宅借入金等特別控除申告書」については、昨年と同様です。問題は、一番名前の長い「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」。これが厄介です。
名前の通り、3つの申告書が1枚になっています。
どこを記入すべきかは人によって違いますが、次の表を参考にしてみてください。
基礎控除申告書 | 全員 |
配偶者控除等申告書 | 合計所得金額133万円以下(給与収入201万6千円未満)の配偶者がいる人 |
所得金額調整控除申告書 | 給与収入850万円以上で「要件」に該当する人 |
注目すべきは、「基礎控除申告書」は年末調整をする全員が記入対象となります!原則、令和2年からはこの申告書を提出しないと基礎控除が受けられないことになりました。「今まで書いたことないから今年も空欄で良いか!」と思っていると税金を多く払う羽目になるのでご注意を!
それぞれの申告書の書き方については、こちらをチェック!↓ ↓ ↓
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まとめ
このように、令和2年の年末調整から内容が大きく変更になりました。内容をよく理解せずに提出してしまっている人もいるのではないでしょうか?もし、記入漏れがあったら、会社に追加の申告ができるか確認をしてみましょう!それがダメなら、ご自身で確定申告をするようにしましょうね。
年末調整の仕組みを理解して、賢く税金対策をしていきましょう!
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