箱根駅伝で優勝するチームの特徴3つ!優勝を経験した主務が見た現実

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”毎年お正月の楽しみは箱根駅伝”という方も多いのではないでしょうか。
箱根駅伝の魅力の1つは、選手たちの一生懸命な姿から生まれる熱いドラマ。実は、箱根駅伝当日には見ることのできない日々の練習にもたくさんのドラマがあります。

今回は、箱根駅伝で優勝するチームの”真の姿”について、実際に優勝チームの駅伝主務をして感じたことをまとめていきます。

この記事を読んでほしい人
  • 箱根駅伝が大好きな人
  • スポーツをしている人
  • 自己啓発を図っている人

特徴1 ライバルとなる仲間の存在

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チームメイトは”仲間”であり”ライバル”

優勝するチームが高いモチベーションを維持し続けることができているのは、一緒に苦楽を共にする”仲間”の存在があるからである。と断言しても言い過ぎではないでしょう。
それだけ、チームメイトの存在は偉大なのです。

 

私が所属していたチームでは、約60名の長距離選手が生活を共にし、毎日一緒に練習をしていました。みんなが同じ寮で生活をし、練習はもちろん、ごはんを食べるのもお風呂に入るのも部屋の中でも、常にチームメイトがそばにいます。

休日は一緒に都内へ遊びに行ったり、夜はゲームやアニメの話で盛り上がったり、恋愛相談をし合ったり…
4年生ともなれば、4年間も一緒に生活しているわけですから、気心が知れた親友に近い関係になります。

 

ですが、選手たちは決して「友達」とは言いません。あくまでも、”仲間”であり、ひとたびグランドに出れば”ライバル”となり競争心を露わにします。

同じ陸上競技を極める仲間。同じ箱根駅伝の優勝を目指す仲間。そして、同じ長距離選手としてライバルであり、同じ箱根駅伝のレギュラーを争うライバルなのです。

厳しいメンバー争い

箱根駅伝を走るためには、まずチーム内でエントリメンバーに選ばれる必要があります。エントリメンバーは16名。12月10日のエントリーの時点で、心身ともに調子が良い者が選ばれます。

もちろん、他の大会の実績も加味されます。どんなに練習で良い動きをしていても、本番に弱い選手は箱根駅伝では通用しません。
エントリーメンバーに選ばれるために、選手たちは1年間かけて自分を磨き上げ、箱根駅伝に向けて仕上げていくのです。想像を絶するほどの厳しい世界がそこにはあります。

 

エントリーメンバーに選ばれたとしても、当日走れるかどうかは分かりません。
最終的に走れるのは、エントリーされた16名のうち、10名のみ。調子が良い選手の中から、特に記録が期待できる選手10名に絞られるわけです。

箱根駅伝当日のメンバーは、前日の夜に交代となる可能性も十分にあります。場合によっては、同じ区間の候補を2人選定し、どちらにも当日走る準備をさせて、当日の朝にメンバーの最終決定をすることもあります。
1年間の努力が実るか実らずに悔し涙に変わるか…最後の最後まで分からないのです。

年末にこの厳しいメンバー争いがあることを分かっているからこそ、日々の練習の競い合いも激しくなります。
長距離選手は負けず嫌いの集まりですから、なおさらですね。

「厳しい練習でも絶対に脱落するもんか」
「あいつより先にゴールしてやる」
「自分が集団を引っ張るんだ」
「他の選手より自主練を多くしよう」

そういう強い気持ちが選手たちを成長させているのです。
時には、ライバルの選手に対して面と向かって「次のレースでは絶対負けないから!」「今のお前には勝てる自信がある」なんて言ってしまう選手もいるので、見ているこっちはハラハラものでした。
もちろん、普段はすごく仲良しなのでご心配なく。

このように、箱根駅伝で優勝を目指すチームでは身近なライバルとなる仲間の存在がチームの力を伸ばしている大きな要素となっています。

 

特徴2 確かな練習量と過剰なほどの自信

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箱根駅伝で優勝するようなチームの選手たちは、過剰なほどの自信を持っています。

逆に言えば、自分の力を過信するくらいの自信と強い精神力を持ち合わせていなければ、20Km以上の長い距離を自分を極限まで追い込んで走るということができないのでしょう。

そしてその「自信」は、日々の厳しい練習を乗り越えてきた”確かな根拠”があります。
根拠がある自信ほど強い自信はありません。

 

私が駅伝主務をしていた当時のチームでは、選手の「自信」が練習にも現れていました。その様子を少しだけご紹介します。

当時のチームはエントリーメンバー全員の調子が良く、誰が走っても優勝できるたけの力を持っていました。

箱根駅伝直前の練習では、「1Kmを3分05秒ペースで16Km走る練習」「1Kmを2分55秒で10本走る練習(400mJog繋ぎ)」を行っても、16名の箱根駅伝メンバーが全員軽々とこなしていました。
これは、例えるなら、大学入試のセンター試験直前に「全科目90点」を目標に模試を実施したら、エントリーした16人全員がすべての科目で目標の90点を超える成績を残すようなものです!

この練習をメンバー全員が誰一人として脱落することなく軽々こなしてしまうのは、怖いくらい強いチームの証です。
(最近ではナイキの厚底シューズの影響で大学駅伝全体のレベルが上がっていますが、当時は厚底シューズを履く選手はいませんでした。それを考えるとやはり、はっきり言って「半端ないっ!」です。)

 

練習が終わっても、彼らはきつい表情ひとつ見せず、練習を最後までできた達成感と”自信”に満ちた清々しい顔をしていました。選手たちは「今年の箱根駅伝は優勝できるでしょ!」「誰が走ってもいけるね!」と口々に言っていました。

 

選手にとって、本番は練習の延長に過ぎません。それほどまでに、質の高い練習をこなし、練習でも本番でも同じ”自信”を持って走っていたのです。

実際、箱根駅伝の結果は往路・復路ともに大会記録での「総合優勝」でした。しかも2位と約9分の大差をつけての圧倒的な強さでの優勝。選手それぞれの”自信”が、チーム全体の”自信”に繋がり、結果として現れたのです

確かな練習量と過剰なほどの自信…
これが箱根駅伝を制するための条件だと言えるでしょう。

 

特徴3 高い自己管理能力

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箱根駅伝を走れる選手は、総じて自己管理能力が高いです。
当時のチームについて、いくつか具体的な例をご紹介しましょう。

事例① 練習メニューを自分で決める

練習メニューは基本的に監督とコーチが決めます。
ですが、メニューは1つではなく、2つ3つ用意されており、選手自身が自分の状態に合わせて選択していました。

練習したことが自分の力となるかどうかは、メニューの選択にかかっています。そして、適切な練習メニューを選ぶために、選手たちはその日の食欲状態、排便の状態、筋肉の状態などをセルフチェックしています。自分を自分で管理することで、必要な練習を自分で見極めているのです。

 

力のある選手ほど、自己管理能力は高いと言えます。
用意されたメニューを基に、監督に直接「こういうメニューをやりたいのですが…」「今週はこのメニューで調整したいです」などと提案します。自分が大会にベストな状態で臨むためには何をすべきかをはっきりと理解している証拠ですね。

「練習メニューを自分で組み立てられる=自己管理できる強い選手」という式が成り立つのではないでしょうか。

事例② 身体に合わせた自主トレーニング

ある選手は、朝練習が終わってから芝生で60分のジョギングをすることを日課としていました。午後練習が終わったあとも同様に長めのジョギングをします。

その理由を聞いてみると、「自分は故障(けが)をしやすいから、練習量を増やしているんだ。練習量を減らすと故障(けが)する身体だから…」と言っていました。

普通、怪我の防止にはストレッチや筋トレをすることが多いですが、この選手はあえて練習量を増やしていたのです。それは、自分の身体と向き合って見つけ出しだ”自分に最適の怪我対策”だったのです。

この選手は、入学当時の記録はチームの下位の方でしたが、徐々に力をつけ、箱根駅伝をはじめとした大学駅伝で大活躍!区間賞の常連になるほどの強い選手になりました。

 

他の選手をみても、「毎日腹筋をすることで調子を維持できる」といった選手や、「走る前に軽めのストレッチと体幹トレーニングは必須」といった選手がいました。

それぞれ、自分に合った自主トレーニングを取り入れていたことが、強さの秘訣だったのかもしれません。

 

事例③ 身体の定期的なメンテナンスと食事制限

厳しいトレーニングに怪我はつきもの。
力をつけるには、怪我をするかしないか紙一重の厳しい練習をする必要があるためです。

 

選手たちは、定期的に身体のメンテナンスをして怪我の防止に努めています。
マッサージに鍼灸、整体など、その時々の身体の状態に合わせてメニューを変えます。中には、関東にいながら治療のためにわざわざ愛知県まで行っていた選手もいました。

もちろんお金がかかることですが、”身体が資本”ですから疎かにはできません。

 

怪我をしてしまった場合には、食事制限も必要になってきます。
「怪我をする=練習量が減る=普通に食べていたら体重が増える」わけですから、体重を維持するためには必要なのです。

これも選手によってそれぞれのやり方があります。
夜の炭水化物(ごはんや麺)を減らす者、20時以降は何も食べないと決めている者、てんぷらの衣をとって食べる者…
いろいろ試しながら、自分に合った食事制限を見つけ出していました。

自己管理能力が高い選手は、大会に自分のピークを合わせることができます。だから強いのですね。

自己管理能力の高さ=競技力の高さ

これは他の競技にも通じることではないでしょうか。

 

箱根駅伝で優勝するチームの特徴:まとめ

hakone ekiden 2020

いかがでしたか?最後に、簡潔に「箱根駅伝で優勝するチームの特徴」をまとめておきます。

  1. チーム内にライバル意識がある!
  2. 確かな練習量からくる過剰なほどの自信がある!
  3. 自己管理能力の高い選手が多い!

この3つがバシッと揃ったチームが次の箱根駅伝で”優勝に一番近いチーム”と言っても過言ではないでしょう。

ただし、今回ご紹介した内容は優勝するチームに限った話ではありません。どのチームも想像以上の努力をしています!箱根駅伝を観戦する際は、選手たちが年に1度しかない箱根駅伝のために、自分を追い込んで努力している姿を思い浮かべてみてください。きっと、箱根駅伝がより一層楽しくなりますよ。